こんにちは。ガバ沼です。
今回は珍しく、鳴き虫について書いていこうと思います。
「キリギリス」といえば、「チョン ギース」と鳴く、夏の風物詩ですが、「顔と名前が一致していない」事例も多いですね。
大きく分けると本州のキリギリスは2種類おり、東日本には、このヒガシキリギリス、西日本にはニシキリギリスG. buergeri (de Haan, 1843)が分布しています。
ヒガシキリギリスは翅長が腹端を超えず高さがあり、黒斑が目立ちます(ごくまれに長翅型もいます)。一方、ニシキリギリスは翅長が腹端を超え、黒斑が目立ちません。
両者の分布境界はくっきり分かれ、中間的な形質を持つ個体を見ることもできますが、遺伝子解析をするとどちらなのかがはっきりします(日本海側では、福井県の小浜市にその境界があることが判明しました)。
その他、どちらとも長翅型ですが、北海道には朝鮮半島からロシアにまで分布するハネナガキリギリス(G. ussuriensis Adelung, 1910)、沖縄に分布するオキナワキリギリス(G. ryukyuensis Yamasaki, 1982)と、国内には4種が生息しています。
さて、オキナワキリギリスですが、沖縄本島とその周辺離島、宮古島に分布しており、他3種よりもひとまわり大きく、翅端までですと60mm近くになります。上翅の黒斑はあまり目立たず、前胸背板の2本の黒帯が明瞭です。体色は青みがかったような鮮烈なグリーンで、4種中最も美しいと感じます。
成虫は6~9月にかけて発生し、サトウキビ畑やその横の雑草が茂った場所で、昼夜問わず鳴いています。翅が長いことが関係しているのか、日当たりのよい時でも、あまり高揚がないように感じます。
キリギリスが♂のみ飼育されてきて、スズムシのように累代されてこなかった理由としては、肉食性が強く共食いが多発すること以外にも、数々の理由があります。
この手の昆虫は、何かにぶら下がって脱皮・羽化を行うため、3齢以降、体重が乗るようになってからは全面メッシュの容器にするなど、とにかく足場に配慮する必要があります。
若齢時はプリンカップにメッシュの蓋をし、それ以降はより広いものに足場を入れての個別管理となります。
↑ガラス面も登ることができますが、累代飼育目的で成虫を複数飼育する場合には、このようなものがオススメです。
また、この4種とも、卵が内因性の休眠卵ですので、冬(低温)を経験させないと途中で胚の発育が止まったり、いつまでも孵化しないままとなるので、次世代を確実に得るには工夫が必要となります。
他の3種にも共通することですが、本種も生息環境の関係上、薬剤を撒かれたり、家や観光客を目的としたカフェやペンションが建って生息地が潰されています。また、現時点では本種の分布域に影響はないものの、造成地では植栽の土壌に卵が紛れていたのか、ニシキリギリスの発見例もあります。
本種もまた、 昆虫を取り巻く自然環境の重要性を改めて考えさせてくれる存在といえるでしょう。