~うちなーかぶと~

こんにちは。ガバ沼です。

沖縄で「カブトムシ」として広く認識されているのは、市街地に近い所でも見られるヤシの害虫、タイワンカブト( Oryctes rhinoceros )とホームセンターなどで販売されている 本土亜種( Allomyrina dichotoma septentrionalis ) ですが、今回は現地でもあまり知られていないものをご紹介します。

オキナワカブトムシ
A. d. takarai Kusui, 1976
トップ画像の個体と同産地の小さめの♂です。

本種は沖縄本島と、その一部周辺離島に生息しています。

本土亜種は早ければ5月の中旬ごろから、雌雄問わず樹液がたっぷりと吹き出した木に集まるイメージが強いですね。ただし、シマトネリコなど、特定の木を植えた場所では、自ら口器で樹皮を傷つけて吸汁する摂食行動を確認することができます。幼虫は腐りきった倒木から堆肥などを幅広く食し、人間の生活圏でも共存していますね。

では、オキナワカブトはというと、沖縄本島ではその殆どが灯火に飛来する♀、シマトネリコの樹皮を傷つけて吸汁している♂といった具合です。発生時期は7月の後半から、8月中旬にかけてです。

幼虫はより木質を好み、スダジイの大木の洞に溜まったフレークや立ち枯れの根部、腐りきった倒木を食します。人間の生活圏から離れた場所で、ストイックにその命を繋いでいます(堆肥ではありませんが、最近になって、木材チップを積み上げている場所での発生も確認されています。)

また、オキナワカブトとクメジマカブト( Trypoxylus dichotomus inchachina Kusui,1976 )は、遺伝子解析の結果、本土亜種や大陸亜種との差異が大きく、最も祖先的で独立的なものであるとされていることから、太古の時代より生活様式も外見もほぼそのままの状態なのかもしれませんね。

さて、実際に本土亜種と形態を見比べてみましょう。

おなじみの本土亜種(左)とオキナワカブト(右)です。

まずは♂ですが…

サイズ以外にも、いろいろと差異がありますね。

オキナワカブトは胸角(短い方)の根元から先端までの幅が殆ど変わりませんが、本土亜種は先に行くに従って明らかに幅が出ます。また、オキナワカブトは上翅の光沢が強く、いわゆる「赤カブ」が見られません(前胸に赤みを帯びる個体でも、上翅は黒い)。

続いて、♀です。

オキナワカブト♀
本土亜種♀
左:本土亜種♀ 右:オキナワカブト♀

本土亜種の前胸背板には明瞭なY字の溝がありますが、オキナワカブトでは痕跡程度でほぼI字です。

続いて、♀を横から見てみましょう。

オキナワカブト♀
本土亜種♀

本土亜種では頭部に明瞭な1つの突起がありますが、オキナワカブトはなだらかな隆起がある程度です。

行動に関しては雌雄とも、本土亜種に比べてよく発音します。また、頭角も胸角も発達が悪いからなのか、前脚を上げて「バンザイ」のようなポーズをとって威嚇します。

オキナワカブトの卵

産卵も幼虫飼育も、本土亜種同様の用品があれば可能です。しかし、高栄養なマットで幼虫を飼育すると大きくなりがちで、「らしさ」をお求めの方は、添加剤が控えめのマットでの多頭飼育をオススメします。

現地のホームセンターでも本土亜種を見かけますが、実際に野外で発見されたり、本種に関しては雌雄とも形質的に違和感のある個体、6月や7月上旬など、本来の発生時期よりも早く活動を始めた個体の採集例(交雑により積算温度に差が生じた?)、宮古島での確認例(移入)もあるようです。

本種もオオクワガタ同様、放虫の危険性など、昆虫を取り巻く自然環境の重要性を改めて考えさせてくれる存在といえるでしょう。

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